デジタルツールで「つながる」「学ぶ」「楽しむ」:心のレジリエンスを高める活用法
デジタルツールは心の味方になる
現代において、スマートフォンやパソコンといったデジタルツールは、私たちの生活に深く浸透しています。インターネットを利用するアクティブシニアの皆様にとっても、これらのツールは単なる便利グッズではなく、心の健康やレジリエンス(精神的な回復力・しなやかさ)を高めるための強力な味方となり得ます。
しかし、デジタルツールに対して「難しそう」「使いこなせるか不安」といった漠然とした懸念をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。あるいは、「使いすぎてしまうのでは」「情報に振り回されるのでは」といった心配もあることでしょう。
この記事では、デジタルツールを高齢期の心のレジリエンス向上にどう役立てられるのか、具体的な活用方法とともに、その注意点についてもご紹介します。デジタルツールを賢く使いこなし、人生後半をより豊かに、前向きに過ごすためのヒントを見つけていきましょう。
なぜデジタルツールが心のレジリエンスを高めるのか
心のレジリエンスとは、困難な状況やストレスに直面した際に、それに適応し、乗り越え、回復していく力のことです。高齢期においては、身体的な変化や社会的な役割の変化、親しい人との別れなど、様々なライフイベントを経験する中で、このレジリエンスが心の安定を保つ上で非常に重要になります。
デジタルツールは、以下のような様々な側面から、心のレジリエンスを高めるサポートをしてくれます。
- 社会的なつながりの維持・拡大: 家族や友人と手軽に連絡を取り合ったり、共通の趣味を持つ人々と繋がったりすることで、孤独感を軽減し、安心感や所属意識を得られます。
- 新しい学びや刺激: 興味のある分野について調べたり、オンライン講座を受けたりすることで、知的好奇心を満たし、脳を活性化させ、自己肯定感を高めることができます。
- 趣味や娯楽の充実: 好きな音楽や動画を楽しんだり、オンラインゲームで気分転換をしたり、趣味に関する情報を深く掘り下げたりすることで、日々の生活に楽しみや彩りが生まれます。
- 情報収集と自己管理: 健康に関する情報を集めたり、服薬や通院のリマインダーを設定したりすることで、自分の状態を把握し、主体的に管理する感覚を持つことができます。
- 表現と自己開示: ブログやSNSで自分の考えや日々の出来事を共有することで、自己表現の場を得たり、他者からの共感を得たりすることができます。
これらの活動は、心理学で心の健康に良い影響を与えることが示されている「社会的つながり」「学び」「ポジティブ感情」「自己効力感(自分にはできるという感覚)」といった要素を促進します。
デジタルツールを心の味方にする具体的な活用法
それでは、具体的にどのようにデジタルツールを活用できるのでしょうか。いくつかの例をご紹介します。
1. 「つながる」を深める
- 家族や友人とのコミュニケーション: メッセージアプリ(LINEなど)やビデオ通話(Zoom、Skypeなど)を使えば、離れて暮らす家族や友人とも気軽に顔を見て話すことができます。孫の顔を毎日見られる、遠方の友人と定期的にオンラインでお茶をする、といった習慣は、心の温かさや安心感につながります。
- オンラインコミュニティへの参加: 趣味のサークルや地域の情報交換グループなど、様々なオンラインコミュニティが存在します。共通の話題で話し合ったり、情報を交換したりすることで、新しい人間関係を築いたり、所属感を抱いたりすることができます。孤立を防ぎ、社会とのつながりを保つことは、心の健康を維持する上で非常に重要です。
2. 「学ぶ」を楽しむ
- オンライン講座や学習コンテンツ: 語学、プログラミング、歴史、美術など、多様な分野のオンライン講座が提供されています。大学などが公開している無料のMOOC(大規模公開オンライン講座)なども利用可能です。新しい知識やスキルを習得するプロセスは、脳を活性化させるだけでなく、「自分はまだ成長できる」というポジティブな感覚(自己肯定感や自己効力感)を高めてくれます。
- 興味のある情報を深く調べる: ウィキペディアで歴史上の人物について調べたり、YouTubeで専門家の解説動画を見たり、ニュースサイトで最新の情報を得たりと、知的好奇心を満たす機会が無限に広がっています。疑問を解決したり、新しい発見をしたりする喜びは、日々の生活に活力を与えます。
3. 「楽しむ」を見つける
- 趣味の世界を広げる: 料理のレシピ動画を見ながら新しいメニューに挑戦したり、ガーデニングの育て方情報を集めたり、好きなアーティストの音楽やライブ映像を楽しんだりできます。インドアでも楽しめる趣味の選択肢が広がり、気分転換やストレス解消に役立ちます。
- オンラインゲームやエンタメコンテンツ: パズルゲームで脳トレをしたり、好きなドラマや映画をオンデマンドで楽しんだりするのも良いでしょう。適度なゲームやエンタメは、気分転換になり、日々の生活に楽しみをもたらします。
4. 「管理する」を助ける
- 健康管理アプリ: 歩数計機能で運動量を記録したり、食事内容や体重を記録したりするアプリがあります。日々の健康状態を把握し、目標設定やモチベーション維持に役立てることができます。
- リマインダーやカレンダー機能: 服薬の時間や通院の予定、友人との約束などを登録しておけば、うっかり忘れを防ぐことができます。日々の管理がスムーズになることで、余計な心配や不安を減らすことができます。
デジタルツール活用の注意点
デジタルツールは非常に便利ですが、利用にあたってはいくつか注意しておきたい点があります。
- 使いすぎに注意: 長時間利用しすぎると、眼精疲労や肩こりの原因になったり、睡眠に影響が出たりする可能性があります。また、インターネット上の情報に振り回されて、かえって不安が増してしまうこともあります。利用時間を決めたり、定期的に休憩を取ったりするなど、意識的にバランスを取りましょう。
- 情報の信頼性を確認: インターネット上には様々な情報がありますが、全てが正しいとは限りません。健康情報などは特に、信頼できる情報源(公的機関や専門医など)の情報を確認するように心がけましょう。
- セキュリティに注意: フィッシング詐欺や個人情報の抜き取りなど、インターネットには危険も潜んでいます。不審なメールやウェブサイトには注意し、信頼できるセキュリティソフトを導入するなどの対策を行いましょう。不安な場合は、詳しい家族や信頼できる窓口に相談することが大切です。
小さな一歩から始めてみましょう
デジタルツールは万能薬ではありませんが、賢く利用することで、高齢期の生活をより豊かにし、心のレジリエンスを高めるための強力なツールとなり得ます。
いきなり全てを使いこなそうと気負う必要はありません。まずは、興味のあることや、日々の生活で「これがあったら便利だな」と感じることから、小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。例えば、離れて暮らすお子さんやお孫さんとメッセージのやり取りを始めてみる、興味のあるテーマの情報をインターネットで調べてみる、といったことからでも十分です。
不安があれば、家族や地域のスマートフォン講座、相談窓口などを活用するのも良いでしょう。デジタルツールを上手に味方につけて、人生後半をさらにいきいきと、前向きに過ごしていきましょう。